猫と暮らせば。

君と生きる、この世界で、この家で、君たちと生きていく。

【君と生きるために】世界で一番幸せな猫(5) 一人じゃないさ

 ゴールデンウィークの終わり頃。

 不思議なもので、その日もまた小雨が降っていた。

 わが家に、2匹目の猫が来る日。

 

 猫ボランティアの女性と、もうひとり、一緒に活動をされているという女性が車でやって来た。抱えたペットキャリーの中には、白い影がちらちら揺れる。

 あの中には、あの人形のような子がいるのだ。

 仲良くなれるだろうか。懐いてくれるだろうか。シャンは可愛がってくれるだろうか。色々な思いが交錯する。

 本当なら、あの時一緒に遊ぶことの出来た2匹の内のどちらかを引き取った方が良かったのだろうと、その時になって不安が押し寄せてきた。

 シャンの時は、選択肢がなかった。そもそも、シャンだけだから他の猫との相性なんかを考える必要がなかった。でも、今度は色々な選択肢の中で、私が選んで引き取ることになったのだ。シャンに対して責任がないなどというわけではないが、一層重たい責任がのしかかってきているように思われた。

 

 家に慣れて落ち着くまでひとりでいられる場所があると良いと言われたので、洋室を新しい猫に使ってもらうことにした。私とシャンは、その間は和室で寝れば良い。

 実は、シャンは引戸を自力で開けることの出来る猫だ。この時住んでいた部屋の引戸の滑りが良かったからというのもあるかも知れないが、和室には勝手に入ってくる。しかし、レバーハンドルであっても「ドアノブ」というものは操作できないようで、洋室の開き戸は開けることができない。

 ボランティアのふたりには、洋室でペットキャリーを下ろしてもらった。

「そわそわしてる」

 先日のように全く動かなかったらどうしようかと思ったけれど、落ち着かない様子でキャリーの中を動き回っているようだ。

 キャリーの蓋を開けても、猫は全く出て来なかった。シャンなら飛び出すところだ。

 ひとりが猫をなだめている間、私はもうひとりと誓約書を交わした。そこには、病気になったら必ず病院へ連れて行くこと、完全室内飼いにすること、そして、生涯家族として大切にすることなどが書かれていた。私はサインをし、印鑑を押して猫を引き取ることになった。

 いよいよ、後戻りはできなくなった。いや、後戻りはしたくなかった。1週間のお試し期間の後も、この子はうちの子だ。覚悟が決まった。

「良いおうちですね。日当たりも良さそうだし、立派なキャットタワーも! いっぱい遊べますね」

 ボランティアの方は、家の中に危険な個所がないかなどを見ていたが、特に問題はないと判断したようだ。

「お兄ちゃんかな? 可愛い子ですね」

 ボランティアの方が、扉の前を行ったり来たりしながら洋室の中を気にかけているシャンに声をかけた。

「ひとりじゃないから、寂しくないね」

 これまで、押し込められて自由がなかったとはいえ、多くの仲間と一緒に暮らしていた猫だ。急にひとりになるのは心もとないかも知れない。

「シャン、少しだけ会わせても良いですか?」

 もしかしたら、飛び付くかも知れない。そんな不安もあったけれど、なぜか、大丈夫なような気がした。

 甘えん坊で大らかなシャンなら受け入れてくれる。

 そんな気がした。