猫と暮らせば。

君と生きる、この世界で、この家で、君たちと生きていく。

【君と生きるために】世界で一番幸せな猫(1) 虐げられて

 引っ越して2度目の春が来た。

 桜の花も散り始め、若葉が青空に映える季節。

 かつてのバイト先であるモデルハウスのスタッフから連絡が入った。

「猫、好きだったよね?」

 モデルハウスオープンから間もなくして入ってきた、店長の前職の部下だったという営業の女性からだ。仕事でしばしばモデルハウスに顔を出したり、集まりで顔を合わせたりすることもあったので、然程「久し振り」という感じではなかったが、連絡が来るのは珍しかった。それも、仕事の話ではないようだ。

「猫、好きです。飼ってますし」

 返信すると、間もなく、

「今、新居を建築中のお客様から、猫の貰い手を探しているとご相談があったんですけど、つゆこさんの連絡先をお伝えしても良いでしょうか?」

 このお客様のことは、知っていた。1年前、最初にご来場された際に対応したのは私だ。

 犬や猫の保護ボランティアをされている年配のご夫婦で、確か旦那様のご職業は教師だったと思う。動物たちの身体にも害のない家を造りたいと訪ねてこられた。犬が怖かったりもするが――考えてみれば、小学校低学年の頃、近所の悪ガキの家で飼われていた大型犬が、仲良しのお姉さんの顔に噛みついて顔から出血する惨状を見てから大型犬が怖くなった気がする。ウサギ小屋襲撃事件より前に――、動物は好きだ。母と違って動物物のドキュメンタリーもよく見るし、『ダーウィンが来た』を録り溜めたりもしていた。動物の保護をされているということで、このご夫婦とは話が盛り上がったのを覚えている。それこそ、『ダーウィンが来た』で盛り上がった。

 猫の貰い手?

 保護した猫、ということか。

 詳しくは本人から聞いた方が良さそうだと、連絡先を教えても構わないことと、こちらにも連絡先をお伝え頂くようお願いした。

 保護ボランティアをされている奥様から、その日の内に連絡があった。メールの文面はやや長く、写真が1枚添えられていた。真っ白な美しい猫、けれど痩せた猫の写真だった。

 その猫について、奥様からうかがった説明の要約はこうだ。

 ある家で猫が多頭飼いされている。おひとり暮らしの女性だが、異臭や鳴き声から、異常な飼い方がされているのではないかと相談を受け、他のボランティアと共に訪問したところ、小さなケージに身動きできない状態で成猫が10数匹飼育されていた。ゴミ袋に、生きている仔猫が数匹と猫の死骸が一緒くたに入れられている状況で、飼育している女性に正常な判断力はなかったとみられる。周囲から押し付けられるままに増えた猫をケージに押し込んだらしい。ゴミ袋の仔猫を捨てに行くところだったと聞き、慌ててその仔猫たちを引き取った。

 その後、ケージで飼育されている猫たちも手分けして引き取った。仔猫はすぐに貰い手が見付かったが、生後1年以上経過している(正確な年齢は解らない)大人の猫たちは、なかなか貰い手がつかない。

 その内の一匹をもらってくれないか。

 

 そんな話だった。