猫と暮らせば。

君と生きる、この世界で、この家で、君たちと生きていく。

【君と生きるために】春夏秋冬(1) 新しい世界

 出逢いはいつも雨の日だった。

 雨のそぼ降る秋の午後、箱に詰められてゴミ捨て場に捨てられていたジェミマ達。

 親とはぐれたらしく、台風の夜に縁側の下で助けを求めていたシャン。

 小雨の中、類まれな生存能力で自分の住処を得たコタロウ。

 

 シャンは新居で伸び伸び暮らしていた。購入したキャットタワーで跳び回ったり昼寝をするのが大好きだった。

 コタロウは、かつてカジモドのように身体がゆがんでいたのが嘘のように、真っ直ぐに歩くようになり、肩をすくめて歩かなくなったためか、飛び出していたように見えた背骨も通常に戻った。加えて、とんでもない甘え上手で、母にべったりくっついている。

 ジェミマは相変わらず勝手気ままだが、顔立ちがとても美しく、母は「イケにゃん」と呼んで可愛がった。

 

 3匹がそれぞれ元気に健やかに育っていて、私も穏やかな心地でアルバイトを続けていた。本職は相変わらず良い噂が届かない。このまま大丈夫だろうかと思いながら仕事をしていたが、私は徐々にアルバイトの方に魅了されていった。

 住宅というものを、それまで真剣に考えたことはない。そもそも私は高校2年生で数学の授業が終了してしまう文系のクラスにいて、同じクラスの男の子が建築学科を目指したいと言い出した時、先生たちが騒然としたのを覚えている。あまり成績の良い方ではなかったので、理転するのは無理だろうと誰もが思ったらしい。結局、その男の子がどうなったのかは覚えていないのだが……。

 ともかく、建築の業界というのは理数系の世界で、私には関係ないと思っていたのだ。だが、実際には文系とか理系とか関係なく、奥が深かった。

 建材メーカーの本社から来る営業さんは、知識が豊富で話が面白かった。偶に、同じく建材メーカーの本社から設計をしている方が来られて、手書きでプラン(間取り図)作成の手法を教えてくれた。プランニング研修をやっているから受けてみてはどうかとも勧められた。モデルハウスの営業マンも増えて、みんなでプランニング研修を受けようと盛り上がり、実際に受けに行くと、設計担当の方から大変褒めて頂いた。

 Facebookでみんなで課題を出し合ったり、切磋琢磨するのも面白く、前を向くことができる。

 今まで知らなかった新しい世界は、誰にも縛られはしない、未知の領域に思えた。

 モデルハウスにもお客さんが付き、本格的に営業が始まった春の午後。

 ゴールデンウィークが間近に迫っていた。

 Facebookのダイレクトメールが届いた。差出人は、建材メーカーの社長。

 

「うちに来ないか」

 

 思ってもない誘いだった。