猫と暮らせば。

君と生きる、この世界で、この家で、君たちと生きていく。

【君と生きるために】共に生きる場所(3) 何かいいこと

 当時、知人が引っ越し業者で働いていた。アリさん。

 その知人の紹介もあり、引っ越し費用は物凄く安くしてもらえた。隣町で、距離が近かったことも理由のひとつだ。ひとり暮らしだし、2トントラックで十分だろうと引っ越し業者も判断した。

 しかし、この判断が誤っていたと解るのは、引っ越し当日になってのことだ。

 

 引っ越しの日は、この上ない快晴だった。空気はひんやりしていたが、風もなく、引っ越しには持って来いの天気だった。

 高校時代の友人のひとりが引っ越しを手伝ってくれることになっていた。彼女には、予め受け取っていた新居の鍵を渡し、新居で荷物の運び込みに立ち会ってもらうことにして、私は引っ越し前の部屋を空にする作業に立ち会った。

 シャンは、ペットキャリーに入れて庭に出していた。埃っぽくてバタバタしてしまうし、人が出入りしておびえるかも知れない。うろうろして邪魔になったり、ケガをするかも知れない。何より、窓や扉を開けっぱなしにするので、外に出てしまうかも知れないと、色々問題があったからだ。

 

 ひとり暮らしではあったが、私の部屋には机やテーブルといった類のものがこの時4つあった。折り畳み式のカウンターテーブルが1つ、パソコン用に使っていた作業用デスクが1つ、ライティングデスクが1つ、居間のローテーブル(こたつ机)が1つ。この他に、幅1500くらいあるテレビボードに使っていたローテーブルもあったし、布団も4組くらいあった。

 私がひとり暮らしを始めた日は、父が単身赴任を終えた日と同日で、父が赴任先で使っていた家具や家電、日用雑貨から調味料に至るまで「ひとり暮らしセット」が私の部屋に運び込まれたのだが、この他に私が実家から持ち込んだ私物(机も含む)があった。その上、もちろん3年に渡るこの部屋での生活の中で物は増えていたし、押入2つの収納力を余すことなく使い切っていたため、荷物は2トントラックの積載量を超えた。

「限界以上積みました、これ以上は無理です」

 アリさんが悲鳴を上げた。

 仕方ないので、残った細々とした荷物は自転車で運ぶことにした。

 当然、運び込まれた荷物の量に、手伝いに来ていた友人も驚いた。

 ちなみに、自転車で運び込んだ荷物で一番の大物はガスコンロだったのだが、当時住んでいた部屋はプロパンガスで、引っ越し先は都市ガスだったために同じガスコンロは使うことは出来なかったのが一番悔しかったことだ。

 どうでもいいか……。

 

 何にしても、晴れた日の午後、小さな長屋の一室が空っぽになった。

 庭にいるシャンの様子を見ながら、3年間世話になった部屋の畳に雑巾がけをしつつ、私は、新しい家で何かいいことが起こるような、そんな予感にわくわくしていた。